見た、訊いた、買った、らしい

見た、訊いた、買った古美術興味深いけれどちょっと鼻につく感じがしていた「芸術新潮」の連載が、一冊にまとめられた。清住白河で現代美術のギャラリーを経営する筆者が、古美術品を自腹で買うという企画である。
あまり高いものは買わないと言いながら、75万円の黒田辰秋の花器や80万円のルーシー・リーの花瓶はどうなんだろう。やっぱりこれらを高くないとする感覚は、市井の人のそれとはかなりずれているように思える。しかし、こんなことを書くのは単なるやっかみみたいで、我ながら見苦しい。うらやましいなら、素直にうらやましいと言っておけばよい。
この本がずいぶん売れているという。「少し背伸びすればハイソサエティな気分を味わえる、そんな生活をしている私」と夢を見させるところが心地よいのだろうか。「Casa BRUTUS」あたりの読者層ときっちり重なっているような。買う買わないのくだりではもやもやするけれど、それ以外は古美術品の品定めの現場を知れるいい本です(ひゃ)。
いつか私もルーシー・リーの器を買える日が来るのかな、と夢を見る*1。夢だけならプライスレス。

*1:蒼井優もいつかルーシー・リーを買いたいと言っていた。ほんとに買いそう。