ブラック・スワン

「レオン」以来の御贔屓であるナタリー・ポートマンが、ついにアカデミー賞最優秀主演女優賞を獲得した作品である。痛いとか怖いとかグロいとか、事前にいろいろと聞こえていた。しかし、3月にR18指定の「冷たい熱帯魚」(園子温監督)をクリアしたことで、R15なんてたいしたことないだろうと、意気軒昂で映画館に乗り込んだ。
  公式サイト http://movies2.foxjapan.com/blackswan/ (音が出ます)
主役の座に抜擢された若手バレリーナが、その直後から神経を病み始め、強い幻覚に囚われるようになる。彼女は次第に正気を失い、現実と妄想の境界が融け出していく。ポートマンは、焦燥感や強迫観念によって押しつぶされていく人間の様を、巧みに表現している。完璧に作り上げられたバレリーナらしい肉体の説得力にも驚かされた。
これまでのポートマンの印象は、まさにこの映画前半のニナそのもので、知的、端正で乱れがなく、よくも悪くも優等生の枠から外れることはない。それが見ている者の心をざわつかせるような妖しい気迫を表すようになった。もはや幼く可愛らしいだけのクイーン・アミダラはここにはいない。
足がポキッと折れたり、両腕に黒い羽根が生える特殊効果は少々やりすぎで、そこだけは気になった。ポートマンの演技でニナの精神の崩壊は十分表現できている。アーレン・ダロンフスキー監督の前作「レスラー」もよかったし、この「ブラック・スワン」でより多くのファンを獲得することになるだろう。ワーナーマイカルシネマズ茨木で鑑賞。