グランプリ

グラン・プリ [Blu-ray]あまたあるレースを扱った映画の中でも出色のできであろう。とにかくレースシーンがすばらしい。1960年代の葉巻型F1が堪能できる。同時に今のF1とは何もかもが違うことに驚かされる。
顔も体もむき出しのドライバーはシートベルトもしていない、コースには縁石がなく、すぐ傍で観客がピクニックをしている、マーシャルや救護班がレース中のコースを平気で横断する、コース脇の緩衝帯は藁束……。確かに毎年数人ずつ命を落とすわけである。もうそのことが気になって気になって、お話を楽しむどころではなかった。あ、嘘、楽しんだけど。
中心になるドライバー役の俳優が、半年以上のトレーニングを経て、自らF1を運転しているのもすごい。今のF1ではありえない。さらにフィル・ヒルグラハム・ヒルブルース・マクラーレンらの一流どころ*1が登場し、フェラーリやBRMその他実在するチームの車が本物のグランプリコース*2を疾走する。間違いなくこの映画の見所はリアルな気配を醸し出すレースシーンである。それに対してドライバーとその妻や恋人たちが織りなす恋愛模様は、昼メロ以下の安っぽいドラマでしかなく、素敵なレースシーンの添え物としておくくらいでちょうどよい。
長年のF1ファンではあるけれど、さすがにこの時代のことはよく知らなかった。それでも十分楽しめた。1966年の作品。

*1:チャンピオンだ!

*2:モナコ・ブランズハッチ・モンツァ・スパ・ザンドフォールトなど