かわいい

芸術新潮 2011年 09月号 [雑誌]「クールジャパン」などという妙な言葉がもてはやされるようになって久しい。 日本発、あるいは日本に深く関わる文化事象が対象となるようだけれど、とりわけマンガやアニメ、ゲーム、ファッション、アイドルなどのポップカルチャーサブカルチャー)が中心となる。間違ってもフジヤマ・ゲイシャ・ニンジャではない。
その「クールジャパン」における重要なキーワードが「かわいい」であるらしいことも、すでに多くに人によって指摘されている。奈良美智村上隆の作品やらハローキティなどが海外でもてはやされるのも、その文脈で理解することができるだろう。ひな壇タレントたちがバラエティ番組で「か〜わ〜い〜い〜」とかいうのも、クールなのかなぁ……。
今月号の「芸術新潮」がまじめにこの「かわいい」を取り上げている。表紙を飾るスワロフスキー製のキティがかわいいかどうかはよくわからないけれど、これに胸をときめかせる人たちは確実に存在するのだろう。さらにここでは、古い日本美術、すなわち仏像や大和絵、工芸品などのハイカルチャーにまで「かわいい」の射程範囲を広げようとしている。もうなんでもあり、「かわいい」無双である。
主観的で個人的嗜好であるはずの「かわいい」が、ここまで世界を規定する基準としてのしてくるとは、ね。四方田犬彦が「かわいい」の対義を「醜い」ではなく「美しい」としたのは、正鵠を得ている。多くの人の共感からなる「美しい」で権威化されたものを、なんでもありの個人的な「かわいい」で無効化し蹴散らしていく。そういうことなのかなと思ってます*1

*1:脳裏にももクロがよぎる