姿三四郎

姿三四郎 [DVD]言わずと知れた黒澤明のデビュー作である。1943年の作品。
もともとは90分ほどの長さであったらしいが、戦時下の規制のため、関係者の与り知らないところで79分に短縮された。しかもカットした部分のフィルムは、戦争の混乱で行方不明になったという。やれやれ。今、見られるのはその短縮バージョンだけである(1952年の再公開版)。
ただ残された短縮版で何か困るかというと、そうでもない*1。著作物への第三者の不当な介入という権利侵害はともかく、作品として体をなさないほど破壊されているわけでもない。淡泊でごめんなさい。
物語は仮面ライダーあたりを思い起こせばいいだろう。必殺技「山嵐」の威力の胡散臭さは「ライダーキック」のそれとダブる。あと柔道シーンが柔道をしているように見えないのもちょっと。ごついおっさん二人がつかみ合ってくるくる回っている。ダンス? 選ばれた者が幾多の苦難や障害を乗り越え成長を果たす予定調和の世界だった。けだしヒーローものとは今も昔もこうであろう。

*1:切られた部分はテロップで説明される