魔法少女まどか☆マギカ

最後の2話を収めたディスクを某巨大レンタル店から借りてきて、ようやく全話を見終えた。第1話から第10話は夏の暑い盛りに部屋に引き籠もって見ていたのだった。タイトルや可愛いキャラに反して、物語は重苦しくシュールである。極めて現代的な問題提起をするダークファンタジーであった。見ようと思ったきっかけは朝日新聞の文化欄に掲載された虚淵玄のインタビュー記事である。虚淵はこのアニメの脚本を担当している。そこでこういうことを述べている。

  • 呪いが呪いを呼ぶというか、憎しみは連鎖する。それが一番怖いとは思います。幸せ、勝利、栄光といったポジティブな言葉は、それと対置されているものをゴミ箱に放り込んだうえで言われます。そこから悪臭が発生し、うじがわいても、見ないふりをして、世の中を明るく照らそうとします。
  • 希望を追いかけても、絶望は必ずついてくる。それを前提に望まないと。天ぷらを作れば、油を固めて捨てねばならないように、廃棄物なしに、きれいなものだけは出てきません。

魔法少女まどか☆マギカ 6 【完全生産限定版】 [Blu-ray]すでに古典になってしまった大江健三郎の「破壊者ウルトラマン」(「世界」1973年5月号)を思い起こさせる。無邪気な正義の味方サリーちゃんからは、ずいぶん遠いところへ来てしまったものである。なにしろメインキャラクターたちがいきなりむごたらしい死を迎えてしまうのである。悪を徹底的に懲らしめる「勧善懲悪の爽快感」は皆無であり、どこへ連れて行かれるのか、どのような価値観で物語が構築されているのか、見ていて不安になることばかりでまったく持って落ち着かない。
主人公も最後まで……、いや、やめておこう、そこはぜひアニメを見て確認していただきたい。ドロドロな話になるのは第3話からです。