スリ

ロベール・ブレッソンの「スリ」(1957)を観る。
芸術的と評してよいほどの見事なスリの手口は、犯しがたい高尚さを感じさせる。それが何かを目的とした行為(たとえば生活のため)、あるいは閉塞感からの不可避な行動ではないだけに、よけいに世俗から離れた思索的なものに映るのだろう。淡々とした主人公のモノローグが、孤絶した境遇を強く示唆し、同時に緊迫感を高めている。
モノクロで描出された古いパリの街並みがことのほか美しく、光や影を熟慮した見せ方をしているのだろうと感嘆する。牢獄の中を描くしかなかった「抵抗 死刑囚の手記より」に比べて、ずっと目を悦ばせてもらえた。
結末の落としどころに吃驚する。そしていつものように(?)ヒロイン役のマリカ・グリーンの美貌にすっかりやられる。