月とチェリー

月とチェリー【ラブコレクションシリーズ】 [DVD]タナダユキが監督をした映画*1の中で最も楽しめた。いい意味での低予算B級感に満ちていて、ニヤニヤクスクスさせられる場面があちこちにあった。少なくとも世評の高い(そしてお金を使っているはずの)「百万円と苦虫女」(蒼井優森山未來主演)よりはるかにおもしろい。予算や人材に頼らなくても、アイディア次第で佳作はきちんと生み出せるということである。
大学の官能小説サークルにうっかり入部した男が、すでに売れっ子として活躍する同い年の女子部員の「取材」と称する活動(性交・SM・デリヘルなど)につきあわされる。己の性欲に打ち負かされて言われるがままの男は、やがてバイト先の可愛い女子にも心惹かれるようになる……。巻き込まれ型の主人公が主体性を回復させると当然ドラマが起きることになる。
おそらく俳優にいろんなものを遠慮なく要求しているだろう。思慮分別なんてどこかへ置き忘れたかのような疾走感や躍動感が全編に漲っていて、愉快な気分になった。大学生ってこんな感じだよねという気配が確かにある。猿みたいにすぐに真っ裸になって抱き合う姿を見ていると、エロより滑稽さが際立つ。それがいい。

*1:劇場公開したものや映像作品として発売されたものに限る(脚本を担当した「さくらん」も含む)