読書競演

すべて真夜中の恋人たち今日の新幹線の友は川上未映子の『すべて真夜中の恋人たち*1』(講談社)にする。自分の気持ちや思いにぴたりと寄り添うようなところがたくさんあって、身のうちをゆっくりときほぐしてくれるような快さをおぼえる。新大阪から雪をいただく富士山を見るまで、ページを繰る手が止まらなかった。
  真夜中は、なぜこんなにきれいなんですか。
  真夜中はどうしてこんなに輝いているんですか。
  どうして真夜中には、光しかないのですか。
冒頭近くのくだりは宵っ張りな私へのことばかと。じんじんしみる。
隣席の身なりのよい白髪の紳士も同じような単行本を静かに読み耽っていた。ちらりと見えた背表紙には『星月夜』とあって、伊集院静の新刊であることを知る。新幹線で見かける中高年の男性の多くは新聞や雑誌を読むか、あるいは酒を飲んで寝てしまっているかなので、とても新鮮に映った。かっこいいなぁ。あんな人になりたい。