テレビの中のグールド

昨年末に手に入れたグレン・グールドの映像作品を少しずつ見ている。「On Television: Complete CBC Broadcasts 1954-1977」というDVD10枚のボックスセットで、グールドがカナダ放送協会の制作する番組で演奏し、後に保管されていた19時間以上の映像（未発表を含む）が収められている。グールドのキャリアの大半をカバーするアーカイブである。
字幕なしで英語、フランス語が飛び交うため、ドキュメンタリーやインタビューシーンを完全に理解しているとは言いがたい。しかし、ただそこにグールドがいるという満足感は何ものにも代えがたく、一番のお目当てであった演奏シーンはゾクゾクするほどの快楽をもたらしてくれる。変な姿勢で鍵盤を叩きまくるのは、若い頃も老いてもまったく同じである。素晴らしきかな、偏屈。映像がモノクロで古臭いとか、音がチープとか、そういうのは些末なことであることを思い知る、いや、思い知れ！
2012年はグレン・グールドの生誕80年にして没後30年にあたる。おそらくまだまだいいものが出てくると思う。懐を寒くしないようにせねば。