ヒミズ

どこまでもテンションの高いまま物語が進行する。常に何かしらの緊張感が漂い、やがて息苦しいほどの感情の塊となって、胸につかえる。「普通」に生きることを望む2人の中学生が、いやも応もなく大きな力に巻き込まれていく。「普通」に生きることのなんと難しいことか。そこにあるものは、まったく「普通」ではない。園子温監督は「冷たい熱帯魚」「恋の罪」などと地続きの現実を、中学生の「普通」ではない生活の中に見ているとおぼしい。
東日本大震災を経て、脚本を書き換えたという。私たちは終わりなき非日常が日常(=普通)になってしまうアイロニーから逃れる術を持たない。絶望の世界から救い出してくれるのは一丁の拳銃か、剥き出しの感情のぶつかり合いか。それはすなわち死と生の鬩ぎ合いの構図である。繰り返し流れるモーツァルトの「レクイエム」が重苦しい物語にさらに陰鬱な表情を与えている。しかし、奏でられる宗教曲の彼方には必ず「救い」がある。映画の結末部分はそのことを強く示唆していると信じたい。
見終えた後しばらく、心の中がザラザラする。主演の二人のうち、二階堂ふみに時めいたのは、お約束の反応ですみません。横浜ブルク13で鑑賞。
 公式サイト http://himizu.gaga.ne.jp/