古めかしくて萎える

京都から東京へ戻ると、今週水曜日にリリースになったものがドカドカと届いていた。
月末に解散する東京事変のライブアルバムやブルーレイ映像の出来のよさに胸を熱くし、上原ひろみのフランス(MARCIAC)公演映像で感激を新たにしたりする。そして四十八人衆の新譜も二種類、落手した。しかし、これはなぁ……。
新曲の一番の売りはメンバー自らが楽器を演奏するバンド形式であることだ。なんでも昨夏から練習を積んでいたとのことである。ただ楽器を経験した方ならおわかりかと思うが、半年やそこらで商業レベルに達するのは至難の業で、事実、1月の彼女たちのライブで初披露した時には、それはそれは残念なものだった。これなら高校生の文化祭レベルにも及ばないよな……と感じるほかない腕前であったのだけれど、しかし、彼女たちのコンセプトは「成長する姿を見せるアイドル」であれば、それもまたエンターテイメントの1つの形として「アリ」だろう。許せるかどうかは見る人次第である。
私がとてもがっかりしたのは、この曲のPVである。四十八人衆のPVは、著名な映画監督やCMディレクターに撮らせることが多く、これまでに、是枝裕和岩井俊二蜷川実花中島哲也本広克行堤幸彦高橋栄樹、黒田秀樹らが名を連ねている。そして今回の新曲PVは「北の国から」の杉田成道の手になる。これがもうどうしようもないくらい古臭い感覚で作られていて萎えた。指原さんがあまり映らないとか、そういうことはひとまず置いておいて、とくかく脚本が40〜50年前のものかと思うくらいの代物で、現代劇としてまったくリアリティを欠く。
複雑な家庭事情や過去のトラウマなどの問題を抱えながら定時制高校に通う生徒たちが、教師に勧められたバンド活動を通して自らの未来を見いだすという物語である。もちろんそういうことが今もありえるだろうことは、想像できますよ。でもそれを正面切ってこの時代に現代劇として映像化されてもなぁ。おまけにバンドをさせた団塊世代の教師の思い出として「安田講堂の放水」場面までご丁寧に登場する。もしかしてこの場面が団結の象徴なのだろうか。なんだ、これ、もうやめてほしい。
こんな黴臭いドラマ映像が30分以上収められているのである。いらない。素直に彼女たちの演奏シーンだけを5分程度にまとめてくれたらよかったのに。あまりにあまりなドラマのせいで、曲も平々凡々のつまらないものに聞こえてくる。

↑↑↑ほんとは誰が演奏しているの? などとは言わない。トロンボーン担当の指原さんは時々ちらちら登場する。