ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち

morio01012012-02-27

世評の高い「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」を撮ったヴィム・ヴェンダースが、前衛舞踏家兼芸術監督兼振付家と長きにわたって親交を持っていたことは知らなかった。そういう繋がりの意外性がこの映画を生み出した。2009年にピナ・バウシュが急逝した後も、強く映画化を望んでいた彼女の遺志を尊重して、諦めかけたこの作品をヴェンダースは完成させたという。しかも3Dで。
映画のためにヴェンダースとバウシュが選んだのは「春の祭典」「カフェ・ミュラー」「コンタクトホーフ」「フルムーン」の4つの舞台である。映画ではこれらの演目に加えて、劇団の本拠地ヴッパタール*1の街や森、庭園などでの新作パフォーマンスが組み合わされる。その塩梅が実によい。
3Dで構成された映像は、向こうからこちらへ飛び出すことに忙しく、なんだか押しつけがましいものに思えるのだけれど、この映画は立体的な空間にこちらから入り込むような感覚がある。ヴェンダースの狙いもそのあたりにあったようで、「踊りの深み」を表現する最適解として3Dを選択したと言っている。「アバター」にがっかりした人(=私)でも、別種の立体体験を味わえると思う。
振付や仕草の一つ一つがなんらかの感情や状況の喩となり、それを自らの想像力で解くことを求められるのは、映画でも舞台でも同じであった。ピナ・バウシュの愉悦はそこにこそあると思う。この楽しみを舞台以外で追体験できるものとして、この作品の残されたことを喜んでいる。梅田ブルク7で鑑賞。
 公式サイト http://pina.gaga.ne.jp/(音が出ます)

*1:フォトジェニックな街だ。吊り下げモノレールがかっこいい!