安藤裕子の復活
1週間前の東京公演では、途中で歌えなくなり、予定された曲の演奏がされないまま終演になってしまった。もともと日(あるいは体調、気分)によってライブの出来不出来の差の激しいアーティストではあったけれど、途中でやめてしまうことはさすがになかった。今春の新譜も初動売り上げが半減したらしいし、東京公演の会場でも空席が目立っていたという。昨年のツアーは体調不良*1で後半が打ちきりとなった。そこからの復帰公演でこういう状態だったので、いよいよ安藤裕子もおしまいか、という声がネットでも飛び交っていた。大阪公演もドタキャンとなるのではないかと危ぶみながら、その日を待っていたのだが、特に何のアナウンスもなく当日を迎えた。
ちゃんと始まってちゃんと終わるのか。これほど不安な気持ちでライブの開演を待ったことはなかった。それが1曲目から思いのほか力強い歌声を聴かせてくれたので、それだけで胸が熱くなってしまった。ライブそのものにもきちんと集中しているし、3曲目の「エルロイ」が終わる頃には「今日は大丈夫」と思える状態だった。さすがにMCは少なめだったが、もともと上手ではないし、それは別にかまわない。なによりすべての曲をきちんとしたクオリティで聴かせてくれたことが嬉しかった。「The Still Steel Down」から本編ラストの「鬼」までの迫力ある姿は、完全に「安藤裕子そのもの」だった。
離れてしまったかつてのファンを取り戻すことはたぶん難しいだろう。この先は小さなホールかライブハウスに戻るようなことになるかもしれない。それでもいいと思う。安藤の曲は大勢でわーっと盛り上がってというようなものではないし、むしろそういう親密な空間でじっと耳を傾けるような空気感の中でよい歌を聴かせてほしい。
四つ橋のオリックス劇場は、かつて厚生年金会館と呼ばれていた頃に来たことがあるくらいで、それも一体いつのことだったかすら思い出せない*2。この日の安藤の公演は、ライブそのものとそれを巡る「物語」によって、きっと忘れないと思う。
安藤裕子 LIVE 2012 「勘違い」 2012年5月5日 オリックス劇場
- 輝かしき日々
- 勘違い
- エルロイ
- み空
- のうぜんかつら
- すずむし
- あなたと私にできる事
- アフリカの夜
- リクエストコーナー パラレル・summer・texas
- 松田の子守歌
- lost child,
- 新曲
- お誕生日の夜に
- それから
- The Still Steel Down
- 永すぎた日向で
- 飛翔
- 鬼
アンコール
- 地平線まで
【サポートメンバー】山本隆二・山本タカシ・新居昭乃・佐野康夫・沖山優司
安藤裕子公式サイト http://www.ando-yuko.com/index.html