賢治の声を聴く

morio01012012-05-19

宮沢賢治の作品を朗読するという催事*1世田谷パブリックシアターで開かれている。いつもは静かに目で追いかける世界を、声という肉体に直接結びついたメディアで味わう時間は格別なものだった。
 公式サイト http://www.siscompany.com/kotoba/
38人の俳優や舞台人が3人ずつ日替わりで登場する。私が見た(聴いた)のは、本谷有希子段田安則江口洋介の公演である。お目当ての本谷は名うての俳優に囲まれても臆することなく、堂々と賢治のことばを唱えていた。もともと舞台にも立っていたから、手慣れたものだろう。
無造作に本が積み上げられた中に、やや大きめな机が一つ置かれている。三人がそこに集まり、マリンバの生演奏やクラシック音楽が静かに流れる中、よく通る声で賢治の詩や短歌や童話を紡ぎ出していく。背後のスクリーンには印象的なフレーズが踊り、照明も賢治の言葉に合わせて息づくかのように明滅する。朗読であるはずなのに、時に完全なる演劇を見ているような錯覚を覚えた。注文の多い料理店春と修羅よだかの星、永訣の朝、雨ニモマケズポラーノの広場……。よく知っている作品がまるで違った相貌を見せて迫ってきた。
同じ演目でも朗読者によって、まったく違った世界を見せてくれるだろう。残念ながら蒼井優の出る公演はチケットを取ることができなかった。蒼井のでなくてもいいから、ぜひとも別の人の朗読も聴いてみたい。どんなだろ。6月3日まで。

*1:朗読『宮沢賢治が伝えること』