京都太秦物語

まったく映画を見る余裕がない。時間というより気持ちの面で。こんな精神状態では肝心の仕事もまともにできるはずもなく、哀しい。
6月はwowowでフランス映画の特集があって、トリュフォーゴダール、シャブロルらの作品が30本くらい放映された。ひとまずHDレコーダーに収めたものの、いまだたったの1本も見ることがかなわない。某国営放送局のBSチャンネルでは、山田洋次が昨年から日本映画のセレクション番組をしていて、古い邦画が毎週放映されている。山田洋次の映画は好きではないけれど、選ばれたものに罪はない、というか、見たいので、彼の名前をキーワード登録してすべてレコーダーに残している。こちらも溜め込む一方である。
山田の名前で自動録画しているため、寅さんシリーズとかもひっかかっているのだが、それはさっさと消している。その中に「京都太秦物語*1」というのがあった。「いらんな」と思って、消そうとしたところ、京都太秦を舞台にして、山田が立命館大学の学生たちと一緒になって、地元密着の短編を作ったとある。1時間半ほどのものであるし、ちょっとだけと思って再生してみたら、もうね、90分が5分に感じられるくらいの勢いではまりましたよ。
物語は、大学図書館に勤めるヒロインが、芸人志望の幼なじみと大学の研究者の間で揺れるという月並みなものなのだけれど、見知った場所が出てくるし、俳優たちも芝居がかった演技をしていないため、知り合いの人たちの話をこっそり聞いているような親しい感覚をおぼえた。とりわけヒロインを演じた海老瀬はな*2がよくて、なんで今までこの人の存在に気付いていなかったのかと深く後悔したほどである(大袈裟)。「京女」と聞くと、脊髄反射的にとても嫌な人のことを思い出してしまうのだけれど、海老瀬さんはいいなぁ*3。特に佇まいとか気配とか。つい彼女が出演している過去の作品を密林でポチってしまいました*4。これから売れっ子になるといいね。
映画史に残る傑作というものではないだろう。でもこういうちょっと気持ちが軽くなるような作品は、「小確幸」を与えてくれるものとして、とても大切に思える。このままレコーダーに残しておいて、何度も繰り返して観ることになりそうである。

 この短編の海老瀬さんもいいなぁ。

*1:公式サイト http://www.ritsumei.ac.jp/eizo/kyotostory/index.htm

*2:京都出身。公式ブログ http://ameblo.jp/ebise-hana/

*3:いつもの悪い癖、かも

*4:「築城せよ」のDVD、なんと677円。人気がないのね。