20世紀少年

映画「20世紀少年」オリジナル・サウンドトラック堤幸彦監督は前作「自虐の唄」に続いて漫画原作作品の映画化に取り組んだ。ただしあちらが4コマ漫画を繋ぎ合わせる形で新たな物語を紡ぎ出したのに対し、こちらは20巻を超える長編作品を3本の映画にまとめるというところに大きな違いがある。舞台の設定から比較的に自由に行えた「自虐の唄」とは違って、「20世紀少年」はこの偉大なる原作といかに向かい合うかが勝負どころであろう。そして堤はどうやら「原作を忠実に梗概化する」ことを選んだようだ。
映画は基本的に原作漫画の語る展開から大きく外れることをしない。構図、演出もしかり。したがって原作を知るものは強い既視感を伴ってスクリーンを眺めることになる。なによりキャストの風貌、容姿が漫画とそっくりであることに驚かされる。主人公ケンヂを演じる唐沢寿明が最もイメージから遠いのはご愛嬌だろうか。映画独自のエピソードは極力出さないようにし、できるだけ原作の展開を生かす。多くのファンを持ち、しかも一家言以上の意見や感想を持つマニアを相手にするためには、まずははずせないところであったと思われる。
ところが、そうやって出来上がった実際の映画は、まさに漫画のあらすじを辿るものでしかなかった。意外なところはどこにもなく、しかも枝葉末節を抜いてしまったため、展開が早すぎてスカスカになってしまっている。原作を知らない人には意味不明なところが多々あるのではなかろうか。また画面を賑やかにする派手なCGなどはかえって安っぽく見えるだけで、ちっとも効果的ではない。アクションシーンもしかり。結局、実写化する意味はどこにあるのか、という根本的な疑問に行き着くことになるのであった。これならアニメでも十分であろう。
ただし裏切られた感は比較的少ないので、「金返せ、馬鹿野郎」というほど酷くもないと思う。まさに「微妙」の一言が似合う映画であった。1960年代以降の日本の世相や時代はうまく掬い取っているので、当時を知る人たちがノスタルジーに浸るにはよい。続編は09年冬に公開予定。ワーナーマイカルシネマズ茨木で鑑賞。
公式サイト http://www.20thboys.com/index.html