少年メリケンサック

少年メリケンサック オリジナル・サウンドトラックそうか、この映画のスタイリストは伊賀大介*1だったのかとパンフレットを見てしみじみする。ステレオタイプとしてのパンク、ロック、フォーク、アイドルなどを、演奏される音楽ではなく、ものの見事に「見た目」でわからせていた。伊賀、GJ。
というようなことはよけいな話で、この映画を見て強く感じたのは「宮崎あおいがこんなにいいと思ったのは初めて」であるということだ。もちろん「いい」というのは、たとえば「蒼井優がいい」「麻生久美子が素敵」というのとは次元が違って*2、俳優として「いい」ということである。ちなみに大河ドラマを見る習慣がないため、宮崎篤姫がどんなものであったか、まったく知らない。しかし、かつて出演していたいくつかの映画では、さほど印象に残るような演技は見せていなかったと思う。それがどうだ、「少年メリケンサック」では強烈すぎる存在感を見せつけ、パンクな中年親父たちを完全に圧倒している。この作品での宮崎のコメディエンヌぶりは一見の価値ありである。
  公式サイト http://www.meriken-movie.jp/
日常生活に埋もれてしまったかつてのパンクバンドが四半世紀ぶりに復活して大団円というわかりやすい物語にもできたはずである。いわゆるお涙頂戴の感動作である。しかし、そうした陳腐で安っぽい感動の押し売りの方向には向かわず、若い契約社員マネージャーに焦点を絞ったことがよかったと思う。バンド側に寄り添うと、どうしてもメンバーの数だけエピソードが増殖肥大化し、結果としてまとまりを欠くということになりがちである。この映画では個々の要素がマネージャーという一点に繋ぎとめられ、寄せ集めといった感じはしない。なによりその求心点(宮崎)が揺るぎなく見事なものだから、収拾のつかないようなドタバタ劇もすべて丸く収まる。宮藤官九郎の脚本は時におふざけが過ぎてわけがわからないこともあるけれど、今回は際どいところで持ちこたえ、それを宮崎に綺麗に絡め取らせていた。
佐藤浩市木村祐一田口トモロヲ三宅弘城の「中年メリケンサック」をはじめとして、おっさん俳優たちは皆それぞれの持ち分で好演している。スターリンアナーキー、スタークラブといったかつてのパンクバンドのスターも登場する。ギターウルフ銀杏BOYZSAKEROCKら現役組もよい。娯楽作品としてぽかんと口を開けて楽しめた。ワーナーマイカルシネマズ茨木で鑑賞。

*1:麻生久美子のつれあい

*2:スルーしてもらって結構です