ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破

morio01012009-06-30

見知ったものに少しだけ手を入れて、安心感と新鮮さを感じさせてくれたのが「序」であった。それに対して「破*1」はまさに「破」だった。記憶にない絵が次から次へと明滅し、固唾を飲んでそれらを見守っているうちに、気がつけばエンディングを迎えていた。以下ネタバレあり、要注意。
まずは襲い来る使途の姿形、能力の変化やこれまでになく激しい動きを繰り返すエヴァに目を奪われたけれど、なにより主要キャラクターの性格や関係性が従来のシリーズと変わっていることに驚かされた。特に3人のエヴァパイロットにそれが著しい。個としての存在や心理を描くのに忙しかったこれまでは、他者(とりわけ同僚たる他のパイロット)との積極的な関わりというものは、限られたエピソードを除き、ほとんどなかったとおぼしい。それが「破」では深い部分での精神的な繋がり、もっと言えば信頼(あるいは友情)のようなものを強く感じさせる描写が多く見られた*2
綾波の人と人を繋ぐための料理やアスカの自己犠牲的奉仕精神など、以前のエヴァではありえない行動であろう。だからこそ、使途によって3号機に幽閉されたアスカとの戦いを拒絶したり、また第10使途に零号機ごと捕食された綾波を死を賭して救出しようとするシンジの一連の行動に、あふれるものが押さえられなくなる。まさかエヴァで泣かされることになろうとは夢にも思わなかった。
周囲に気遣いする綾波、自分を押し殺して他を立てるアスカ、それが良いか悪いか、そこまで大幅に変更してしまう必要があるのか、俄には決しがたいけれど、新生エヴァにとっては必然であったのだろうとは思う。精神混乱、人格崩壊、破滅する世界という一見難解なようで、実は安直な結末を選んだこれまでのシリーズとはまったく異なる着地点が用意されているような予感と期待を抱かせるものであった。
まだ謎の多い真希波・マリ・イラストリアスの正体やいよいよ動き始めた渚カヲルの位置づけ、シンジ、レイ、アスカがどうなってしまったのかなど、謎を多く残す「また来週お会いしましょう」的な終わり方は、いかにも中を繋ぐ2作目ならではのものであった。スターウォーズの2や5もこういう感じだったなとふと思ったりした。
ワーナーマイカルシネマズ茨木で鑑賞。

*1:http://www.evangelion.co.jp/

*2:たとえはあまりよろしくないかもしれないが、形を変えた戦隊ものみたいだった。