時をかける少女

時をかける少女 オリジナル・サウンドトラック走る少女の姿を追いかけるようにあの主題歌が流れてきて、一気に映画の中に引き込まれる。
1983年に公開された大林宣彦監督による同名作品の設定をほぼ受け継ぐ形で物語が紡ぎ出される。主人公はかつて原田知世が演じた芳山和子の娘あかりであるし、和子を取り巻いていた浅倉吾朗や深町一夫ももちろん登場する。
ラベンダー、温室、桜、弓道、そして理科室、オマージュに満ちた映像は懐かしさと安心感を生み、映像の中に静かに沈潜することができた*1。もちろん大林版を知らなくとも愉しむことはできようが、できれば過去の作品を予習(あるいは復習)してから今作を見ると、より興味深い時間を過ごすことができるだろう。

高校卒業を目前に控えた芳山あかりは、母・和子が薬学者として勤める大学にも無事合格し、新たな生活に胸を弾ませていた。ところが、和子が交通事故に遭い、事態は一転。「過去に戻って、深町一夫に会わなくては…」と必死に訴えながら昏睡状態に陥った母の願いを叶えるため、和子が開発した薬を使って1972年4月にタイム・リープすることを決心する。(公式サイトより)

あかりを演じる仲里依紗*2がとてもよい。「純喫茶磯辺」ではさほど目立つような存在ではなかったのに*3、この映画では極めて正しい位置に収まり、清々しくかつ力強い印象を残している。今時の女子高生の側面と記憶の中の芳山和子の側面をうまく表現していた。5月に公開予定の「ゼブラーマン」でもすごい演技をしているそうだから、これも楽しみである。
  公式サイト http://tokikake.jp/indexp.html
大林監督の尾道三部作の一つとして制作された「時をかける少女」は、もはやその枠に留まることはなく、「時をかける少女」群の核として確固たる地位を築き上げたようである。あの映画を母体として、これからも良質な「時かけ」が生み出されることを期待したい。
一つだけ惜しかったところ。吉岡聖恵の歌声にうっとりしたものの、途中で挿入歌として流れた男性歌手のそれは「プロモーションで入れました」感が見え見えで鼻白む思いがした。新宿ピカデリーで鑑賞。

*1:できれば舞台は尾道であったほしかったのだが

*2:アニメ版でも主人公の真琴を担当していた

*3:共演の麻生久美子に目を奪われていたともいう