光の雨

光の雨 特別版 [DVD]高橋伴明監督による連合赤軍事件の初めての映画化作品である。2001年に公開された。立松和平の同名小説を原作とするが、それをそのまま映像に移したのではない。
社会的な事件をドキュメンタリーよろしく描こうとしたのではなく、劇中劇(事件を30年後に映画にするという設定)として事件を追いかけようとする。赤軍のことをよく知らない現代の俳優たちが、30年前の忌むべき出来事に戸惑いながら、やがて「総括」の勢いに飲まれたのか、自他の演技自体を「総括」し始めるような気配となる。過去の亡霊にまさにオルグされるかのように。怖いね。
ただ若松孝二監督の「実録・連合赤軍 あさま山荘への道程」(2008年)が公開された今となっては、演出や構成などに緊迫感のなさを感じることもまた事実であろう。「光の雨」の主眼が、事件そのものの凄惨さや新左翼運動の無力さを暴き立てるというより、現代人の感じる事件や思想への違和感そのものの描出に力点のあったことが大いに関係していると思われる。
凄惨なリンチ事件を撮影した現場セットの前で、役者たちが無邪気に雪合戦をするエンディングシーンがたいへんに印象的であった。ここに1960年代と2000年代の彼我の差を強烈に感じる。