君に届け

君に届け 1 (マーガレットコミックス)蒼井優麻生久美子上野樹里伊藤歩らを主演とする映画を作ってきた熊澤尚人。羨ましいというか、目の保養をさせてくれてありがとうというか、ずるいぞこらというか、そんなキャスト選びである。そして最新作では多部未華子を真ん中に据えた。これはもうどう考えても熊澤は私を喜ばせようとしているとしか思えない。そんな妄想すら脳内を駆け巡るほどである。
ただし映画そのものの作りはいただけないことが多いように思う。「ニライカナイからの手紙」「虹の女神」「おと・な・り」……、どれもこれもそんなに都合よくいくものかとつっこみたくなる大雑把な展開となる。こうした悪しき特徴は「君に届け」でも見られるもので、きっとこの監督は細やかな描写よりも物語の筋そのものの力で無理やり押し切ろうとするタイプなのだろうなと思ってしまう。
映画を観た後にまとめて読み切った椎名軽穂の原作漫画では、黒沼爽子や風早翔太の内面や行動がきちんと(時にはくどいくらいに)描かれていて、理不尽さや飛躍しすぎなところをあまり感じることがなかった。脚本にするときにもう一工夫があってもよかったのではないだろうか。なにしろあらすじだけではない、気配とか雰囲気とか、そういうものを椎名は描こうとしているように見えるのだから。
ストーリーその他は公式サイトで。高校生の恋の話です。風早と同じく胡桃沢梅より黒沼爽子でしょう。高槻アレックスシネマで鑑賞。
 公式サイト http://www.kiminitodoke-movie.com/index.html