西加奈子『通天閣』

いわずとしれた大阪のシンボル通天閣。この小説には何者かに置き去りにされた二人の主人公が登場し、それぞれが無関係に奇数章と偶数章で交互に描かれる(もちろん最後は結びつく)。通天閣自体がそこにあることを知られていながら、どこか大阪の人たちに積極的に関わってもらえないようなところがある*1。西が舞台としてこの場所を選んだ意図の奈辺にあるかはうかがい知れないが*2、世間から置き去りにされながら、でもちょっとだけ必要とされる主人公たちの日々の姿は、まさに通天閣のそれと重なるのではないか。大阪の匂い(臭い?)のする小説だが、持て囃されているリリー・フランキーの『東京タワー』ほど読者を引きずり回さないし、一般受けするとも思えない。もちろん小説の値打ちはそこだけにあるわけではないけれど。
通天閣 大奥 (第2巻) (JETS COMICS (4302))
よしながふみ『大奥』の第2巻が出た。さっそく読む。吉宗の時代の続きかと思ったら、家光の時代に巻き戻っている。ネットで調べてみると、第1巻の話は序章にあたるとのこと。ふ〜む。第2巻は物語がぐんぐん前に進んでいく感触がある。おもしろい。

*1:案外、地元民は上ったことがないと聞く

*2:うかがう必要もなし、小説は楽しく読めばよい