2冊ほど

芥川賞を逃した柴崎友香の新作『また会う日まで』(河出書房新社)。ミノルタTC-1*1で街のスナップ写真を撮る女性が主人公というだけで、くらくらと蹌踉めいてしまいそうになった。そういえば賞の候補作になった『その街の今は』(新潮社)も大阪の写真が重要なアイテムになっていた。亀ヲタなのか、柴崎? 東京を舞台にしているものの、登場人物の大半は大阪人である。高校時代に淡い思いを抱いた男との再会を物語の軸にしている。今風の大阪弁による会話が心地好い。
一方、『たまには、時事ネタ』(中央公論新社)は斎藤美奈子の批評とも愚痴ともつかぬ時事にまつわる「おしゃべり(過去5年分)」を集めたものである。かつてのような冴えとかキレのようなものはあまり感じられないが、「おじさん的気質(=大日本帝国的体質)」をぶった切るところなどは楽しめる。ただ「ブログ」のことを2005年1月に取り上げているのだが、そこで得々と説いたことに対して、後日「あの頃ブログは珍しかった」はないだろう。2年前の今頃でもブログはもう十分メジャーでした。リサーチ不足。