さくらん

morio01012007-02-26

金魚と桜、そして赤と黒蜷川実花の写真の重要なモチーフが、この映画でも効果的に使われていた。あたかもニナミカの写真集が動いているかのような印象である。人工的な金魚の美しさを花魁のそれと重ね合わせ、水槽(吉原)の中でしか生きていけないモノの儚い美と生を比喩的に印象づける。また桜は日暮(土屋アンナ)の登場時から幕引きまで折に触れて描き出され、彼女の人生(すなわち物語の骨子)を決定する重要な存在となっていた。どちらも原作本第1部には登場しないものであり、蜷川実花と脚本を書いたタナダユキの発想にあずかる独自の要素なのであろう。映画はこの金魚と桜の意味するところを通装低音として響かせ、原作に見られる印象的なエピソードをつないでいく。また赤と黒という二つの色彩を、これまた花魁の光と陰に重ね合わせ象徴的に配している。エンディングがアレでいいのかという個人的な思いはありはするが、総じて娯楽映画としてとても楽しめる作品になっていると感じた。
蜷川実花のパンフレットのことばはまさに本音であろう。

どうやら私の人生は、すべてここに向かう為に進んで来たみたいです。

もっとも次作はどうするのかという懸念はある。毎回、金魚と桜というわけにはいかない。
俳優陣は迫力十分。主演の土屋アンナは彼女しかないと思わせる熱演である。ただ演技自体は「下妻物語」のイチゴ@ヤンキーと酷似する。脇では敵役となる高尾花魁を演じる木村佳乃がよかった。これまでの楚々とした印象とはまったく違う本能剥き出しの演技に圧倒される。夏木マリ菅野美穂もよかった。椎名林檎の旧作をアレンジした音楽も豪華な映像にぴったりで、これまで椎名の音楽はあまり好きではなかったのに、にわかにきちんと聴いてみたくなったほどである。とにかくみんなかっこいい(昨日と同じオチ)。この映画は大きなスクリーンでけばけばしさと毒々しさを味わうのがよいと思う。ワーナーマイカルシネマズ新百合ヶ丘で鑑賞。
公式サイト http://www.sakuran-themovie.com/