太陽

morio01012007-03-26

世評の高い「太陽 [DVD]」(アレクサンドル・ソクーロフ監督)をようやく観た。戦争末期1945年8月の昭和天皇を描く。入念な史実調査を踏まえながら、ソクーロフ独自の演出、さらにはイッセー尾形の怪演により、極めて個性的なヒロヒトが現出した。
これ以上ないほどの国家的、政治的、宗教的な存在でありながら、この映画では昭和天皇を神格化することも貶めることもしない。人間なのに「人間であること」を宣言しなければならなかったという奇妙な人生を生きた人物を、イッセー尾形は市井の人のようにチャーミングかつユーモラスに演じていた。イッセー尾形といえば、「トニー滝谷」(市川準監督)での水際立った演技が思い起こされるが、一人の生身の人間を造型するという点で、滝谷とヒロヒトの間にも極めて強い連続性を感じた。けだし至芸である。それも圧倒的な。過剰な装飾を施さないソクーロフの乾いた客観的視点も好ましいと思った。
格が違う。
公式サイト http://taiyo-movie.com/
太陽 [DVD] トニー滝谷 プレミアム・エディション [DVD]