選挙

morio01012007-07-19

もうすぐ選挙がある。私の「絶対に投票しない候補者」の条件。

  • 選挙カーに乗って名前を連呼する*1
  • 駅前で「行ってらっしゃい」「お帰りなさい」を言う*2
  • 電話をかけてくる*3

一言で言えば、無神経で押し付けがましく品がない、さらに厚かましくて配慮のできないやつには入れたくないということである。政策が第一ではないし、何より政治家でなくてもこんな輩は大嫌いである(爆)。あ、話が逸れた。
さてイメージフォーラム@渋谷でたいへんおもしろい映画を観てきた。想田和弘監督の「選挙」である。選挙という制度をエンターテイメントとして洒落のめす。いや、洒落のめすように見えるのは結果的にであって、想田監督*4はあくまでも淡々と目の前の出来事を映像として絡め取っているだけである。ナレーションも音楽もなし。平成17年に行われた川崎市宮前区での市議補欠選挙の顛末がひたすらスクリーンに展開する*5。ニヤニヤと笑って見ていたら、この国の滑稽さともの哀しさがくっきりと浮き彫りにされていた。
この映画の主人公である山内和彦氏は川崎市には縁もゆかりもない落下傘候補である。小泉ライオンハート純一郎に心酔し、公募に申し込んでみたら採用されちゃった、てへ、てなことで立候補したわけであるが、川崎市議会のパワーバランスの鍵を握る議席であるため、自民党が総出で彼の応援をするのであった。山内氏の思惑とは別に大政党ならではの圧倒的な人海物量作戦が展開される。これがもう部外者には非常識かつ滑稽で仕方がない。内なる常識とはかくも相対的なものであるのかと、いまさらながら思い知らされる。つまりは、そこここに見える「常識という名の非常識」が、どうにもこうにも日本的なのであった。土着的封建的といってもいい。そして当事者は誰もそのことに気づかない。
山内氏は育児支援とか地域でも改革とかいくつかの公約を掲げるが、どれも思いつきの域を出ない。それで何をするかというと、結局、名前の連呼とおじぎと握手である。あとは保育園の運動会に出たり、老人会の地域行事に参加したりする。なんじゃそれと思うが、これが選挙運動の大半を占めている。要するに存在を認めてもらうことこそがすべてなのである。彼の選挙活動にどぶ板選挙の真髄を見る思いがする。聞くものの誰もいない場所でハンドマイクを握る山内氏。ケンタッキーおじさんと握手する山内氏。スーツに襷がけ姿のまま神輿を担ぎ、ラジオ体操をする山内氏。「常識という名の非常識*6」にぶち切れた「家内」をなだめる山内氏。おもしろうてやがて哀しき……。
選挙戦終盤の盛り上がりに合わせて、映画にもクライマックスが用意されている。あのライオンハート内閣総理大臣鷺沼駅前にやってくるのだ*7! 無論、新人の山内氏は小泉総理と同じ場所には立てない。しかし、彼は時の総理と2回握手したことに感激し満足する。そして彼は当選した。お見事。頑張ってくださいと書こうと思ったけれど、彼はもう川崎市議ではないのだった。この5月で任期切れ……。

公式サイト http://www.laboratoryx.us/campaignjp/

想田監督はこれを「観察映画」第一弾とする。次に観察されるのは何?

*1:娘がまだ小さい頃、やっと寝付いたと思ったら、これで起こされて、以来許せなくなった。どうせ名前と政党しか言わないのだからやらなくてもよい。

*2:うざい。見ず知らずのやつに言われたくない。

*3:頼みもしないのに生活に割り込んでくるな。

*4:撮影などもすべて一人でこなす。

*5:特定の政党の批判や後押しもなし

*6:なにしろ配偶者はすぐに仕事を辞めるように勧められ、さらには「家内」と呼ばなければならないのだ。「妻」はダメ。ああ、麗しき幻想の「内助の功

*7:やってくるといえば、橋本聖子も荻原健二もやってきた