天然コケッコー

morio01012007-08-18

とても心地好い映画である。演技がとか、絵柄がとか、展開がとか、そういうのはどうでもよいと思わされる気持ちよさがある。映画の鑑賞後に原作漫画を全巻読んだが、同じ空気感で貫かれており、右田そよ(夏帆)は紛れもなくそよだし、大沢広海(岡田将生)も紛れもなく大沢だった。彼らが島根の穏やかな空気や光の中でのびのびと動いているだけで幸せな気分にさせられた。脚本を担当した渡辺あや*1は原作の台詞だけで全編を構成しようとした。この説明しすぎない潔さが映画全体の風通しをよくしているのは間違いない。レイ・ハラカミの緩い音楽もその雰囲気にぴたりと決まっていた。
天然コケッコー (1) (集英社文庫―コミック版)演出も細かなところまで心配りがされている。たとえば色。田園や山の緑、海と空の青がことのほか印象的で、そこにトマトやスイカの赤、小学生のランドセルやジャージの赤などが踊る。そよの紺色の学生服に真っ赤な鞄も美しい。そう、こっこ@鶏のトサカの赤も綺麗に揺れる。また子供たちの何気ない仕草は自然に出たものか、演出なのか、そこまではわからないけれど、背後に潜む感情までもがよく伝わってくるようである。見ていて鼻につく小賢しい子役*2とはまったく違う。ラストシーンのそよの行為は、彼女の学校への深い愛情がきっぱりと表されていて秀逸だった。
山下敦弘監督の作品には、「リンダリンダリンダ」しかり、「天然コケッコー」しかり、遠い過去になってしまった中高生の頃の甘酸っぱい何かを刺激されるような思いがする。夏の間にまた観たい。109シネマズ・グランベリーモールで鑑賞。
公式サイト*3も丁寧に作られている。山下監督やレイ・ハラカミくるり渡辺あやらの話が聞けるポッド・キャストも配信するサービスぶりである。