純喫茶磯辺

純喫茶磯辺 (竹書房文庫)宮迫博之。「蛇イチゴ*1」「下妻物語*2」で見せた怪演は記憶に新しいところである。いまペーソス感のある浅薄なダメ男を演じさせたら、この人の右に出る人は何人かいるかもしれないが、それほど多くないのは確かである。それくらいこの映画でもダメっぷりが爽快だった。カッコいい人がダメなところを見せるのはよくあることで、ダメな人が徹底的にろくでなしっぷりを見せるところがいいのだ。もはや立派な才能と言うほかない。
 ストーリーや解説 → http://www.cinematopics.com/cinema/works/output2.php?oid=8350
妻に逃げられたダメ男裕次郎が父の遺産を手にして思いつきで始めるダサい喫茶店は、まさしく宮迫流いいかげん節全開の祝祭空間である。そしてその非日常的空間の女神を麻生久美子が演じる。裕次郎といい勝負のいささか思慮に欠けるアルバイトの素子という女性は、麻生がいままでやったことのないような役柄であるが、野卑なことを言ったりしたりしても、下品にならないのはいいなぁ。うっとり。このいいかげんな二人に対して、裕次郎の一人娘咲子がしっかり者として引き締めにかかるものの、もちろんうまくいくはずがない。しかし、そのうまく運ばない中で、すこしずつ三人の立ち位置の変わっていくところが見所なのであろう。
感激、感動してどうのこうのという映画ではない。じんわりとなにかいい気持ちになる。吉田恵輔監督。渋谷シネ・アミューズで鑑賞。
 公式サイト http://www.isobe-movie.com/