高津川とキティに慰められる

なんとか天気は持っているようだが、予報は雨の一点張りであった。本格的に雨が降り出す前に高津川*1だけは見ておきたいと思い、益田駅からまっすぐそちらに向かう。最初の計画ではグラントワ島根県立芸術文化センター*2)で展覧会を見た後、高津川に沿って津和野まで自走するつもりだった。いつ降り出してもおかしくない空模様だから、もう諦めるしかない。
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益田駅から自転車で10分もかからず、高津川に辿り着く。海にほど近いところだし、なにより雨続きであったためか、流れる水に感激するほどの透明感はない。水質日本一を実感できなくて残念無念である。気を取り直して針穴カメラで写真を何枚か撮る。そうこうするうちにますます暗くなってきたので、駅を挟んで反対側にあるグラントワに急ぐことにした。
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グラントワに続く道には開催中のキティ展の旗が連なっている。催し物の内容によって架け替えられるはずだから、街ぐるみで芸術文化センターを盛り上げようということなのだろう。その心意気、とても素晴らしいと思う。グラントワ島根県立芸術文化センター)は島根県立石見美術館といわみ芸術劇場が一体となったもので、平成17年に完成した。本格的な美術館とオペラまで上演可能な劇場を持つ複合施設である。

島根県芸術文化センターは、「島根県立石見美術館」と「島根県立いわみ芸術劇場」の複合施設です。この施設は、石見地域の芸術文化拠点として、美術や音楽、演劇などの分野が相互に協調し、誘発し合いながら、多様で質の高い芸術文化の鑑賞機会を提供します。また、石見地域にはぐくまれてきた文化を大切にしながら、地域とともに新しい芸術文化を育むとともに、その創造をめざします。

単に中央の流行を後追いするのではなく、地元*3に密着した文化や芸術を育むというコンセプトがよい。定期的に石見神楽の公演なども行っているし、劇場・美術館それぞれがワークショップも開いている*4。ハードだけ作って終わりではなく、地元住民を巻き込んで地域に根ざしたものにしようという意気込みが感じられる。
そして建物がまた感動的なまでに美しい。公式サイトの写真で見ていただきたいのであるが、日本建築の様式を取り入れ、建築資材も地元の石州瓦を巧みに使用し、他では見られない「オンリー・ワン」の美を形成している。展覧会のいかんを問わず、この建物を見るためだけでも行く価値はあるだろう。中庭の水盤の涼やかな様子や建物内の渋く光る赤いカリンの床も見事であった*5。全国を巡回している「KITTY・EX」展、地元の萬福寺に所蔵される二河白道図(重文)の公開展、館所蔵の日本画展などを観る。草間彌生の黄色い南瓜が常設されている。じんわりと感動。
昼ご飯は館内にあるレストランで小洒落たランチをいただいた。ここの食材も石見地方で採れたものを使っている。
食事が終わりに近づく頃、いよいよ本格的に降り出した。自転車を益田駅まで走らせ、そこからはひたすら電車と新幹線を乗り継いで大阪まで戻ってきたのであった。山口線の途中にある津和野を散策するつもりだったが、酷い大雨で諦めた。私には傘がない。
自転車旅行のはずなのに、ほとんど折り畳んだ状態のまま運ぶだけの三日間だった。いずれ萩・津和野・高津川をうまく絡ませて、このあたりをきちんと走ってみたいと思う。

*1:http://www.kankou.pref.shimane.jp/mag/08/06/takatsu.html

*2:http://www.grandtoit.jp/index.html

*3:世界遺産石見銀山もほど近い

*4:グラントワ・ボランティア会(http://grangtoit.sakura.ne.jp/index.htm)なる組織が裏支えしているとのこと

*5:なお大きな荷物はチケット売り場で預かってくれた