ブーリン家の姉妹

ブーリン家の姉妹 1  上 (集英社文庫)ブーリン家の姉妹 1  下 (集英社文庫)ナタリー・ポートマンスカーレット・ヨハンソンの16世紀コスプレが堪能できる。
国史において極めて大きな転換期となったヘンリー8世の時代を描いてはいるが、史実を丁寧に掬い取るのではなく、一人の王を愛した二人の姉妹のありように焦点を当てている。決して重厚長大な歴史物語ではなく、底の浅い昼メロのような痴話話に見えなくもない。
権力と地位を獲得せんとする野心家の姉と、そういうものには興味を示さず、ささやかな幸せを求める妹。登場人物の典型化がすぎる憾みは残るけれど、今をときめく二人の女優の存在ですべての欠点は帳消しだ。それくらい二人の存在感は突出している。とりわけダースベイダーの妻であったポートマンが、本家ベイダーも真っ青の善から悪への劇的な変身を見せている。一方のヨハンソンは魔性系の印象が強いけれど、「真珠の耳飾りの少女」で見せたような純朴な田舎娘を上手にこなしていた。
気になったのは、ある程度の時間の流れを追いかけているはずなのに、唐突に数ヶ月、数年分の時間を飛び越えるところである。そのせいでいささか物語としての落ち着きをなくしているように思えた。東急ル・シネマで鑑賞。