ノン子36歳(家事手伝い)

morio01012009-01-30

ちまちまとした雑用と闘い、夕方解放される。降る雨に負けじと思い、渋谷に出て映画を観ることにした。思えば映画館に行くのは今年初である。坂井真紀が主演を務める「ノン子36歳(家事手伝い)」を選んだ。R-15への妙な下心がなかったといえば嘘になるが、そっち方面はあまり期待しすぎると空振りします>後を追うかもしれない人へ。
以下、ネタバレなしで行きます。

三十路半ば、バツイチ出戻り、実家の神社で家事手伝いのノブ子。やる気なしのノン子の前に、神社の祭りでヒヨコを売ってひとやま当てようという若者、マサルが現れた。世間知らずで、情けないけれど、ひたすら一途で真っ直ぐな年下クンに、笑顔を忘れたオンナが、閉ざしていた心と体を少しずつ開いていく……。

チラシやパンフレットに載っているこのあらすじに特に問題はない。しかし、「ココロとカラダをやさしく潤して、自分らしさを実感させてくれる大吉映画。あしたがくるのがちょっと嬉しくなります」という宣伝惹句は完全に明後日の方向を向いている。そういう三十路女性を応援するハートウォーミングな映画では決してない。むしろ「じたばたしてみたけれど、いろいろなことが思い通りにならなくて、明日なんてどうなるのか、わかったもんじゃない、こんちくしょう」というのが、この映画の本質であると思う。ヒロインのノン子の不機嫌さをたっぷり味わうことこそが肝要であろう。そして坂井真紀は三十路の不機嫌さを見事に表現していたと思う。ふてくされた表情で自転車に乗りながら、通りのゴミ箱や看板を次々に蹴飛ばしていく行為は、秩序だった「正しい世界」への彼女なりの精一杯の抵抗であり、ノン子のささくれ立った精神を象徴的に表すものであろう。そうした焦燥感や閉塞感を無理やりハートウォーミングや泣きの方面で売ろうとするから、薄っぺらで安っぽく見えてしまうのだ。映画自体は決して悪くないのに。アブラギッシュな中年男(元夫)を演じた鶴見慎吾と、吃驚仰天のスナックママ新田恵利の二人が嫌な存在感を見せつけて映画を要所で引き締めていた。
ヒューマントラストシネマ渋谷*1で鑑賞。
公式サイト http://nonko36.jp/

*1:シネアミューズから名前が変わっていた