WALLE

ウォーリー [DVD]PIXARの映画は「トイ・ストーリー」と「ファインディング・ニモ」の二作を観ただけである。端的に言えば、あのディズニー精神を具現化したようなお伽話に馴染めないのだ。もちろんそれはあくまでもこちら側の問題で、無邪気に付き合える娯楽映画としてはきっとよくできている。
「ウォーリー*1」は公開時の世評が高く、また物語が近未来SFというところにちょっと惹かれて、何度か劇場まで足を運びかけた。結局、観なかったけど。晴れてレンタルが始まったところで、さっそく借りてきた。
絵が綺麗だ。汚いゴミだらけの場面でも綺麗である*2。隅々まで丁寧に描かれている。全体的にツルンとした質感は紛れもなくPIXER調で、この映画の出自を明確にうかがわせている。ウォーリーの起動音がMacのそれであるのはジョブズに敬意を払ってのことだろうか。そう思い始めると、ヒロインのイブが新しいMac、ウォーリーがオールドMacにも見えてきてしかたがなかった。ついニヤリとしてしまう。
一方、物語は何もかも予想通りに進む。荒廃した故郷を捨てた者たちが、流浪の旅を経て、復興のために帰還する。その立役者となった正義の味方が大活躍する。強い既視感にさいなまれそうな、どこかで見聞きしたような話である。「え、それは!?」と思わされるのは、悪役が拍子抜けするほど弱いことくらいだろう。
友情とか愛とか正義とか勇気とか真実とか信頼とか、そういう「正しいもの」がこの映画にはてんこ盛りである。ディズニーブランドの面目躍如たるものがある。どれにも自信の持てない者(=私だ!)は少々落ち着かないことになる。哀しいことに。「正しいもの」を素直にかつ無批判に受け入れられる人にはいいと思う。

*1:公式サイト http://www.disney.co.jp/movies/wall-e/about/index.html

*2:主人公の唯一の友人があの昆虫(黒いアイツ)であるのはどうにも耐えられないのだけれど