マン・オン・ワイヤー

1974年8月、ワールド・トレード・センターのツインタワーにロープを張って綱渡りをしたフランス人がいた。
当時「史上、最も美しい犯罪」と称されたこの大道芸の一部始終を、関係者のインタビューと再現映像、当時の写真を組み合わせて再構築している。見所はクライマックスに至るまでの手続きと人間関係のありようだろう。必ずしも完璧な準備ができていたとは言えない状況で、メンバーは仲間を信じ、時には偶然をも力にして、一大事を成し遂げようとする。地上400mでの綱渡りシーンは奇跡と呼ぶほかない崇高な儀式であった。
必ずしも動きは多くなく、むしろ当事者たちの思い出話をじっくり聞くことがもっぱらである。その証言*1の組み合わせが一大プロジェクトの真実を巧みに織り上げていく。
45分間の空中散歩*2を成し遂げたフィリップ・プティにはワールド・トレード・センターの展望デッキへの永久VIP許可証が贈呈されたという。しかし、それが使われることはもはや二度とない。9.11のことにはいっさい触れないのも、この映画の見識(あるいは立場)であろう。シアターN渋谷で鑑賞。
水曜日は映画館の入場料が千円になるところが多い。それで「マン・オン・ワイヤー」の後にまたしても「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破」を見てしまった。館内には若い女性客があふれかえっていた。どうなるのかがわかっているのに、一度目よりも心が揺さぶられた。まだ見足りない感じがする。

夕方の空は雲がすごい勢いで流れていた。世田谷線の踏切から空を撮る。

*1:やや芝居がかった話し方には少しだけ違和感を覚えた

*2:BGMとして流れるサティの「ジムノペディ」が印象深い。音楽担当はマイケル・ナイマン