流れる
キャストされる女性俳優陣が1950年代のオールスターと評される作品らしい。幸田文の同名小説を原作とする。
煌びやかな花柳界の裏側を描きながら、時の流れに取り残されて零落するしかない置屋の内実を描いている。田中絹代、山田五十鈴、高峰秀子、岡田茉莉子、杉村春子、中北千枝子、賀原夏子、栗島すみ子らの、いずれ劣らぬ演技巧者の織りなすドラマがすばらしい。これだけ多くの人たちの競演であっても散漫な印象はなく、それぞれの組み合わせによる個々の場面でも各人の個性が際立っている。ぬるい演技をしようものなら弾き出されるのではないかというような緊迫感がある。
この頃の俳優というのは、とにかく品があると感じる。さらには矜持、自恃が並外れている。そういうものに満たされた画面の悪かろうはずがない。山田五十鈴と岡田茉莉子、素敵です。成瀬巳喜男監督。1956年作。