祇園の姉妹
山田五十鈴、いい。
かの小津安二郎をして「こういう映画は撮れない*1」と言わしめた「祇園の姉妹」には、19歳の山田が出演している。これを見ると、今時の19歳の俳優のあまりの軽さ、薄さ、緩さに呆然としてしまう。圧倒的な存在感と凄みである。
京都の花街に生きる対照的な気質の芸妓姉妹を描く。しかし、芸妓の表の顔にいっさい触れず、人間として生きる姿や考え方だけをクローズアップしている。監督の溝口健二に近しかった新藤兼人は「人間を人間として描くところが新しかった」とDVDに収録されているインタビューで答えている。
山田の演じる「おもちや」の狡猾かつ打算的な「現代っ子ぶり」はたいへん魅力的で惚れ惚れしてしまう。群がる男を騙し続ける酷い悪女であるのに、ちっとも腹立たしさを感じない。小悪魔とかコケティッシュとか、すべては山田の魅力のうちである。
唐突に終わるラストには驚かされたが、どうやらもともとはあと30分ほど長い映画であったらしい。戦前のものゆえ、失われたところの見られないのが惜しまれる。俳優達の操る京都のことばがいい*2。1936年作。
蓮見重彦「山田五十鈴讃」 http://www.mube.jp/pages/milkhall_10.html