夜の女たち

夜の女たち [DVD]1948年の溝口映画を観る。主演は山田五十鈴ではない。
戦後まもなくの混乱する大阪で、夫と息子を亡くした女性が、生きるために夜の世界へ足を踏み入れる。自らを慰みものに貶めた男達への復讐を誓う女を田中絹代が演じる。生きるというシンプルな営みが、こんなにも苛烈なものであったのかと驚かされる一方で、どうにも田中の一挙一動のすべてについていけず、最後まで嫌な違和感を拭い去ることができなかった。街娼の衣装がコスプレに見えた時点で、もはやどうしようもない。
しかし、こういう表面的な印象を感じながら、一方で、もしこれが溝口の狙いであったとしたらどうなのだろうかとも考えた。すなわち街娼に似つかわしくない女*1までもが、生きるためとあらば、茨の道に足を踏み入れざるをえない時代であった、それをリアルに描こうとしたのだと。そうだとしたら、溝口が田中を主演に選んだのも納得がいく。ただその可能性は限りなく低そうだけれど。
一つ確かなのは、私は田中絹代がどうしようもなく苦手だということだ……。

*1:顔が濡れたら力が出ないという人(?)にそっくり