めし

めし [DVD]小津映画で神棚に祭り上げられるほど神格化された原節子が、成瀬巳喜男の作品で所帯やつれした妻を演じるおもしろさがまずあった。冷たい夫の態度に飽き飽きし、やさぐれてふてくされた表情を見せる原に、初めて血の通ったものを感じたように思う。とはいえ、主に容姿からくる人工的な印象だけはどうしようもないけど。夫役の上原謙もいい。見ているものにまで腹立たしさを感じさせる優柔不断な夫をきちんと演じる。
二人を引っかき回す若く美しい姪が登場するものの、総じて何か事が起こるという演出や無理矢理な力業はいっさいない。倦怠期の夫婦がいました、妻が実家に戻りました、夫が迎えに来ました、元の鞘に収まりました、ただそれだけのことを淡々と丁寧に掬い取る映像が好ましい。波瀾万丈な展開を好む人には合わない映画です。
それにしても1950年代の大阪や東京はのどかな気配の街だったんだねぇ。人が多くてもどこかのんびりしている。1951年の作品。