大丈夫であるように Cocco 終わらない旅

大丈夫であるように-Cocco 終らない旅-(初回限定盤) [DVD]どういうわけか、今の今まで見逃していた。是枝裕和監督がものしたCoccoドキュメンタリー映画である。
辺野古六ヶ所村、広島、ひめゆり。単なる地名ではなく、特別な意味を帯びた象徴的な土地である。何か重大なことが起きているのに、当事者以外は何も関わりがないようなふりをする場所。ジュゴンの住む海を守るために活動する彼女が、沖縄にいるだけでは理解できないことを知ろうと出かけていき、その災禍(といってもいいだろう)のありようを自らのことばで語ろうとする。是枝監督はCoccoのそうした姿をそのまま掬い取り、映像作品として成立させている。これまでにいくつかのPVを制作してきた間柄ゆえの嘘のない濃密な気配が感じられる。
Coccoは「災禍」が地元に益をもたらす*1ことも十分承知している。だから難しいのだ*2。「ジュゴンの見える丘」で「正しい優しさ」を歌う彼女は、自分にできることはみなが「大丈夫であるように」祈り、願うことだけだという。
とはいえ、これはある種の思想信条に導かれたプロパガンダものでは決してない。Coccoという一人のアーティストの活動の裏側を丁寧に追いかけていくことが、まずある。音楽のこと以外はほとんど知られていないだけに、ファンにとっては貴重なものであろう。そして何かを考えるきっかけとしても。

*1:職が増えたり道路がついたり

*2:現政権がやすやすと答えを出せるようなものではない。それを囃し立てる浅薄な人々もたいそう醜いと思う。