天国と地獄

天国と地獄<普及版> [DVD]黒澤明監督作品。1963年に公開された。身代金目的の未成年誘拐事件を推理サスペンスドラマとして描く。なんとなく安普請な2時間ドラマにでもありそうな設定ではあるが、そこは黒澤、あちこちに仕掛けを作って、社会派娯楽作品として楽しませてくれた。
黒澤が当時の誘拐の罪に対する刑の軽さに警鐘を鳴らそうとしたことはよく知られていようが、周防正行監督の「それでもボクはやってない」がこの国の司法裁判制度の実態を暴こうとしたことを思い起こさせた。いや、順番は逆か。
犯人がわかるまでのじりじりとした時間、犯人がわかってからのじりじりとした展開、安直なご都合主義をよしとしない作りがたいへん好ましかった。これはまったく好みの問題となるけれど、黒澤作品では時代劇より現代ものの方がおもしろく思える。三船敏郎仲代達矢、渋い。