ハーブ&ドロシー

morio01012010-11-22

現代アートを見る時、たいてい困惑とか気恥ずかしさのようなものを感じている。
  ミンナホントウニソレヲヨイトオモッテミテイルノダロウカ
それはすなわち自分の美に対する自信のなさから来るものだろう。便器や殴り書きやゴミの山を訳知り顔で唸りながら見るなんて、格好悪くないのか!? でも虚栄心から、心で感じられないものを頭で解釈しようとする*1。さらには、そうした展覧会の会場に横溢するスノッブな気配や雰囲気も苦手である。尖ったオシャレな感じにはなかなかついていけそうにない。きっと私は現代アートの敗北者……。
そんなわけで、この映画でも、現代アートの大コレクターたるヴォーゲル夫妻の「活動」よりも、長年連れ添った夫婦の「愛情の深さ」の方に強く心を打たれたのである。「ほしいから集める」「集めたものは手放さない」、なんたる潔さだろう。その価値観を夫婦で共有して、一生を過ごす。妬ましくなるくらい素晴らしい。いいよなぁ、二人で物欲*2を炸裂させて、部屋の中に居場所もなくなるくらいの圧倒的な量の好きなものに囲まれているのだもの。私はどこまでも己の感情に素直に生きる人間のドラマとしてこのドキュメンタリーを観た。
上映館の渋谷イメージフォーラムは大入り満員だった。関連イベントも好調のようである。きっと「現代アートの理解者たち」に支持されてスマッシュヒットすることだろう。
 公式サイト http://www.herbanddorothy.com/jp/

*1:目の前のものが重要ではなく、その背後のコンセプトとか思想こそを味わうべきであろうことは、ひとまず了解している

*2:そこか、とか言わないでもらいたい