おとうと

おとうと <通常版> [DVD]映画館ではなく、ディスクでもなく、wowowで。
山田洋次は大の苦手で、よほどのことがない限り、手は出さない。この作品も、贔屓の蒼井優が出演しているのにもかかわらず、映画館には行く気になれず、レンタルになっても借りようとは思わなかった。でもテレビで放送するならと正月に録画して、ようやく今日観たのだった。
女手一つで娘(蒼井優)を嫁にやるところまで育て上げた老母(吉永小百合)が、幼い頃から面倒ばかり起こしてきた弟(笑福亭鶴瓶)の乱行にまたしても巻き込まれながら、最後は肉親らしい愛情をかけて彼の死を看取るというものである。
終盤、案外、涙腺を刺激された。あれ? でも……。
ああ、もう、いちいち説明的な演出や台詞や音楽がくっついてきて、苛々させられる。なんなのだろう、このお節介な親切さは。観る人の想像力をまったく信用していないようだ。強い類型的表現で人物を腑分けし、シンプルにして迷いのない展開に乗せていく。なにしろあの蒼井優が型にはまった結婚適齢期の娘の演技をしているのには驚いた。そういう演技を要求するなら、別に蒼井でなくてもいっこうにかまわないではないか。鶴瓶の演じる弟も非関西人が忌み嫌う典型的な大阪人だし*1、蒼井が最初に嫁ぐ医者とその家族も社会の上層に棲む傲慢不遜な俗物として、実にわかりやすい造形である。でもなんで医者は悪人で大工は善人なんでしょう?
道徳や常識や社会通念や固定観念からずれることなく、安心して観られるという意味で、あるいはわかりやすい情緒と風情で、山田洋次は支持されているのだろうね。
 公式サイト http://www.ototo-movie.jp/

*1:鶴瓶の愛人も同様