川の底からこんにちは
ぴあのスカラシップに選ばれた監督の作品はお気に入りになるものが多い。第一回の風間志織*1に始まって、その後の園子温、橋口亮輔、矢口史靖、古厩智之、熊切和嘉、川合晃、李相日、荻上直子、内田けんじらの作品には、よく親しんできた。「川の底からこんにちは*2」の監督である石井裕也も2007年にグランプリを受賞し、その系譜に名を連ねるものである。
私なんてしょせん中の下の女ですから、それはでも、しょうがないですよ
まったく洗練されていない作風ながら、わけのわからない疾走感と爽快感を感じる。恋愛や仕事、さらには生きることそのものに行き詰まった25歳の女子が、倒産寸前のしじみ工場を父親から継ぎ、やけくそで突っ走っていく。妥協、惰性、諦観にどっぷりと浸かっていた人間の、突如開き直って発揮する「火事場の馬鹿力」がおかしいやら哀しいやらで、あっという間にエンディングまで辿り着く。無理に笑わせようとか泣かせようとか、その種のあざとさのないところが好ましい。
「愛のむきだし」(園子温監督)とも「カケラ」(安藤モモ子監督)とも違う満島ひかりが楽しめる。アイドル歌謡の世界にいたのが俄に信じられないくらい、佇まいが女優然としている。先日の国産映画賞*3では蒼井優と助演女優賞を分け合っていた。満島にはそういう期待感があるのだろう*4。三軒茶屋中央劇場で鑑賞。
後半に聞こえてくるめちゃくちゃな社歌がいい!