一休さんのお寺を巡る

この秋も「京都非公開文化財特別公開*1」が始まった。今回で47回を数える。普段は決して見ることのできない場所が公開され、楽しみは多い。今日は紫野にある名刹大徳寺を目指す。「目指す」とか威勢のいいことを書いたけれど、京都駅からバスに揺られているだけ。居眠りしながら30分の小旅行の後、到着する。
大徳寺には昨年の特別公開の際に訪れている*2。しかし、その時は本坊のみの公開であった。今回は遠目に眺めただけの唐門や未公開だった法堂も見せてもらえる。かの聚楽第の遺構に間近に接することができるし、また見たくて見たくて仕方のなかった法堂天井の狩野探幽の龍も実見することができる。さらに塔頭の一つで茶室忘筌が名高い孤篷庵も9年ぶりに公開される。もう行くしかない。
孤篷庵はさすがに人気で、静けさの中でじっくり味わうとはいかず、その点は残念だった*3。忘筌の素晴らしさは筆舌に尽くしがたく、時を忘れて引き込まれてしまう魅力があった。小堀遠州によって巧みに構成された茶室には、光と風が創出する類い希な空間が生み出されていた。自分の部屋にしたい……。赤土の枯山水も珍しいものでおもしろかった。
忘筌に酔いしれながら、一休さんの庵室のあとであった真珠庵へ。ここは昨年見たばかりである。見たばかりなのだがまたまたうっとりする。長谷川等伯や土佐光起の絵がそこここにある家ってなんなのだろうね。
最後に大徳寺に立ち寄る。方丈の八十余面の狩野探幽の襖絵にまたもや圧倒され、庭園の枯山水をしみじみと愛でる。そして唐門を手を伸ばせば届く距離で鑑賞する。豪華絢爛な彫刻や意匠が圧倒的な迫力を生み出している。往時の豊臣秀吉の力がこの門だけでも十分感じられる。さすが「日暮らし門*4」の異名を取るだけのことはあると思った。最後は典型的な禅宗様式を持つ法堂で、狩野探幽の龍をたっぷり味わう。知恩院三門にある同じ探幽の龍はカラフルに彩色されているが、こちらは生々しい白黒龍で強い緊迫感のある凄みが感じられる。この龍に睨まれながら、ずっとここにいたい……。
極端に抽象化された空間を楽しむためには、己の想像力を最大限駆使しないとどうしようもないなと今さらながら思い知る。「一休さん、ありがとう、また見せてください」とつぶやきつつ*5、帰路についた。
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「見せるものか!」と孤篷庵/イノダコーヒーでアラビアの真珠とマロンクーヘンを味わう

*1:http://www.kobunka.com/hikoukai2011aki.html

*2:http://d.hatena.ne.jp/morio0101/20101104

*3:文化財にもたれたり、苔を踏みつぶしながら歩いたりする人たちは、いったいどういう神経をしているのだろう

*4:まともに鑑賞すると長時間を要するから

*5: