八月の路上に捨てる

伊藤たかみ芥川賞受賞作が掲載されている「文藝春秋」を買ってきた。30代のフリーターが、自身と仕事仲間双方の離婚について感慨を述べ合うというのが主たる内容であるが、生活することの切迫感とか重みとか、そういうものがあまり感じられず、なんだか読み応えのない小説であった。スケッチ的描写の巧みさや会話の妙はあるのに、それが小説全体に奉仕していない憾みが残る。「角田光代の夫」に受賞させる話題作りがあったのかというのは、穿った見方だろうか。一方、映画も小説も素敵だった魚住直子の『非・バランス』(講談社文庫)。彼女の二作目『超・ハーモニー』(同)でも、逃げ出さず世間と格闘する子供たちのまっすぐな姿がとてもいい。児童文学として軽々と見送るのはもったいない。

非・バランス (講談社文庫) 超・ハーモニー (講談社文庫)