小菅正夫・岩野俊郎・島泰三『戦う動物園』

画期的な行動展示と爆発的な市民運動。方法こそ違うものの、廃園の危機を脱し、奇跡的な復活を遂げた二つの動物園が日本の北と南にあった。旭山動物園(北海道旭川市)と到津の森公園(福岡県北九州市)の両園長による対談は、単なる動物園の再生成功物語の披露に留まらない。彼らの信念と行動はそのまま肯うべき箴言となりえている。編者の島泰三(動物学者、岩野の実兄)による知に裏打ちされた巧みな文章、構成も秀逸である。印象批評から脱することのできない類書とは一線を画するものであるといえよう。雨の音を聞きながら、一息に読み切る。中公新書、2006年7月。
戦う動物園―旭山動物園と到津の森公園の物語 (中公新書) 親指はなぜ太いのか―直立二足歩行の起原に迫る (中公新書)