木下杢太郎『百花譜百選』

morio01012007-01-24

大学時代の恩師が「いつか木下杢太郎の研究書を書き下ろしたい」と熱く語っていたことを思い出す。医学者であった杢太郎と恩師はまったくの畑違いなのであるが*1、折に触れそういう話を聞かされていたものだから、私もまた杢太郎の書いた本をたまさか繙いたりしていた。また伊東市にある木下杢太郎記念館*2に足を運んだりもした*3
杢太郎の書いたものでは草木や花をスケッチした『百花譜』がとりわけ印象深い。敗色濃厚な戦時下、最晩年の杢太郎が静かに描き続けた植物図譜である。おいそれと手に入れられるような代物ではなく、もっぱら図書館などで眺めるだけだったが、丁寧に描き込み彩色された草花は、専門画家にはない木訥な筆致ともあいまって、独特の味わいを湛えている。近頃はそんなこともすっかり忘れていたところ、岩波文庫から『百花譜』のダイジェスト版が刊行されたことを知った。手にした『百花譜百選』を眺め、「何もかもみな懐かしい……」とつい沖田艦長のような台詞を吐いてみたりして。

新編 百花譜百選 (岩波文庫)

新編 百花譜百選 (岩波文庫)

出久根達郎読売新聞で読む明治―昔をたずねて今を知る (中公文庫)』(中公文庫)、安田正彦『平安京のニオイ (歴史文化ライブラリー)』(吉川弘文館)、阿辻哲次近くて遠い中国語―日本人のカンちがい (中公新書)』(中公新書)、それから復刊なった橋口譲二の『17歳』『Father』『Couple』なども。
PS3、買ってしまった。ただいま「グランツーリスモHDコンセプト」を絶賛ダウンロード中。631MBもあって、待つのが長い……。

*1:当然、私ともかけ離れている

*2:http://www.hamajima.co.jp/kokugo/furusato/contents/bungakukan/22-04.html

*3:熱海への新婚旅行中、照