木下杢太郎『百花譜百選』
大学時代の恩師が「いつか木下杢太郎の研究書を書き下ろしたい」と熱く語っていたことを思い出す。医学者であった杢太郎と恩師はまったくの畑違いなのであるが*1、折に触れそういう話を聞かされていたものだから、私もまた杢太郎の書いた本をたまさか繙いたりしていた。また伊東市にある木下杢太郎記念館*2に足を運んだりもした*3。
杢太郎の書いたものでは草木や花をスケッチした『百花譜』がとりわけ印象深い。敗色濃厚な戦時下、最晩年の杢太郎が静かに描き続けた植物図譜である。おいそれと手に入れられるような代物ではなく、もっぱら図書館などで眺めるだけだったが、丁寧に描き込み彩色された草花は、専門画家にはない木訥な筆致ともあいまって、独特の味わいを湛えている。近頃はそんなこともすっかり忘れていたところ、岩波文庫から『百花譜』のダイジェスト版が刊行されたことを知った。手にした『百花譜百選』を眺め、「何もかもみな懐かしい……」とつい沖田艦長のような台詞を吐いてみたりして。
- 作者: 木下杢太郎,前川誠郎
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2007/01/16
- メディア: 文庫
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PS3、買ってしまった。ただいま「グランツーリスモHDコンセプト」を絶賛ダウンロード中。631MBもあって、待つのが長い……。
*1:当然、私ともかけ離れている
*2:http://www.hamajima.co.jp/kokugo/furusato/contents/bungakukan/22-04.html
*3:熱海への新婚旅行中、照