幸福な食卓

morio01012007-02-04

ウナコーワもろこしヘッド」という虫さされ薬のCM*1に、オレンジ色の服を着て変な踊りをする若いのか老けているのかよくわからない女性がいた。その人が映画「幸福な食卓*2」の主演を務めた北乃きい*3であることを、ついさっき知った。あまりの別人ぶりに驚いた。
■結末についての重大なネタバレがあるのでご注意下さい■
映画は「父さんは、今日で父さんを辞めようと思う」という印象的な台詞で始まる。脚本を担当する長谷川康夫は「泣けることを売り物にしてはならない」「淡々とした正統かつ良質なホームドラマ」にしたかったという(@パンフレット)。確かに家庭内の役割を放棄する家族(父・母・兄)が、やがて佐和子(北乃きい)の行動や成長を基軸として再生していく流れを見て取ることができる。ただ肝心の家族の個々の問題は背景として薄く描かれるだけで物語の本質的な部分への関わりがやや弱いように見えた。これは瀬尾まいこの原作がそうなのか、映画ならではの造りなのか、そのあたりは詳らかにしないが、佐和子が彼らの再生の鍵となっているとはいえ、家族のことを切り離してしまっても問題ないくらいの扱いになってしまっているのは食い足りないところであった。そして映画の大半で描かれるのは「世界の中心で愛を叫ぶ」ことに忙しい佐和子と大浦勉学(勝地涼)の若くて青い恋愛である*4。しかも結末まで……(自粛)。もちろん脚本家の言の通り(小松隆志監督の意図でもある)、ヒステリックに涙を煽るような演出はないけれど、あまりのわかりやすい悲劇っぷりはどうなんだと。そしてその時家族は彼女のために何をしたのか。むしろ兄の恋人の小林ヨシコ(さくら)の方が遙かに深く関わっていた。冒頭にインパクトのある台詞を吐いた父さんはずっと影が薄くていただけない。むむぅ。
主演の北乃きいがすばらしい。凛とした佇まいは生来のものか。北乃を見るためだけにもう一度行きたいと思うけれど、それはあくまでも私個人の趣味の問題なので放っておいてください(笑)。ワーナーマイカルシネマズ新百合ヶ丘で鑑賞。
予告編(要QuickTime) http://www.apple.com/jp/quicktime/trailers/shochiku/kofuku/

幸福な食卓

幸福な食卓

*1:コーワのCM http://www.kowa.co.jp/g/break/04/#

*2:公式サイト http://ko-fuku.jp/pc/

*3:北乃きいブログ http://blogs.yahoo.co.jp/yokoyokoberry/

*4:二人はキットカット・ブレークタウンのサイトで公開されている「ハルノ呼吸」というショートムービーでも共演している。監督は「鉄塔武蔵野線」「さゞなみ」を撮った長尾直樹。どちらも大好きな映画である。そしてキットカットといえば「花とアリス」である。「ハルノ呼吸」も映画化するのか。