平安文学と遊ぶ

読み違え源氏物語枕草子REMIX (新潮文庫)国語入試問題必勝法 (講談社文庫)』や『蕎麦ときしめん (講談社文庫)』『永遠のジャック&ベティ (講談社文庫)』などの初期小説群がおもしろくて、一頃ずいぶんと清水義範の本を買い漁っては読んでいた。しかし、毎度同じような調子の書きぶりに毒とか捻りのようなものが感じられなくなってきて、いつしかまったく手に取ることがなくなってしまった。売れっ子になって説教臭い本*1を出すのも嫌になった理由の一つかもしれない。
さて『読み違え源氏物語』(文藝春秋、2007年)は久しぶりに清水がものした真っ向勝負のパスティーシュ小説であろう。相手は源氏物語である。意外にもこの大古典を俎上に載せていなかったのに驚かされたが、その驚きも読み進めるにつれて失望感に変わっていった。紫上や葵上、夕顔、六条御息所ら、この物語のヒロインたちのエピソードを、古今東西のさまざまな形で模倣するのであるが、無理やりいろいろな型にはめ込んで作ってみましたという感じしかしないのだ。パスティーシュという性格ゆえ原作から離れられないことはいたしかたないが、源氏物語のあらすじや結構と照らし合わせるのだけが唯一の楽しみだとしたら、あまりにもつまらないではないか。
酒井順子の『枕草子REMIX (新潮文庫)』(新潮文庫、2007年)は清水のような小賢しさがなくて、枕草子の世界で自由に遊んでやろうという気概が見えていいと思う。取り上げ方に既視感があるような気がしないでもないけど。
ある本を注文しようとしたらアマゾンにしか在庫がなかった。アマゾン内を彷徨っているうちについでに椎名林檎の「平成風俗」までポチッとしてしまう。

*1:文章読本とか日本語本とか教育本