芸術選奨文部科学大臣賞

ミクシィ上原ひろみコミュニティで、彼女が本年度の「芸術選奨文部科学大臣新人賞」を受賞したことを知る。そういえば新聞でそんな見出しを見たような気がするが、誰がというところまでは読んでなかった。
http://www.bunka.go.jp/1bungei/18_geijutusenshou.html
上記サイトで他の受賞者の一覧と贈賞理由*1を読むことができる。見知った名前*2が居並ぶ中に、柴崎友香までいるではないか*3。意外と言っては失礼になるだろうか。

大阪の街が舞台となれば、これは近松門左衛門井原西鶴から谷崎潤一郎、岩野泡鳴、織田作之助と豊富多彩、目もくらむような作品群が迫ってくる。小説『その街の今は』(新潮社、九月)は確かに今風にちんまりとしてはいるが、そのエッセンスは先人たちに較べても決して引けを取らない。大阪の今と人を過ぎ去った時間という溶液を使って鮮やかな離れ技で現像してみせてくれた。小説は人情を描くのを骨法とする。そしてこれがいちばん難しい。みんなこれから逃げて、理屈をこねる。柴崎友香氏の作品は逃げず、新感覚の人情小説をものにした。

なんと近松西鶴・谷崎・織田作に連なる系譜に数えられている。「大阪文学」をものす作家に対して、これ以上の褒め言葉*4はないだろう。先日刊行された『ショートカット (河出文庫)』(河出文庫)も、大阪を舞台とするもしくは大阪との関わりを描く短編を4編収めていて、芥川賞候補作*5になった『その街の今は』(河出書房新社)と同じような作風、文体で好ましく思った。軽妙な大阪弁トークを交わしながら、深夜の道をちょっと気になる人と二人きりで歩くくだりなんて、その場の空気感や情景がまざまざと立ち上がってきて心がキューとなった。おっさんだけど。

*1:贈賞なんて偉そうやなぁ、さすが文化庁

*2:いずれ劣らぬ強者揃いだ、もちろん面識などあるはずもない

*3:今年度の「咲くやこの花賞」「織田作之助賞」も獲った

*4:実質的な価値はともかく

*5:石原慎太郎は「論外」としたんだけどね